【レポート】第26回「The Decipher」

第26回The Decipherを開催しました。今回はトランスヒューマニズム第2弾。The Economistをさらに読みながら、トランスヒューマニズムについて学びました。

狙い

  • トランスヒューマニズムの研究

内容

【今回の記事】

Cyborgs, superhuman and cranks. March 22, 2025. The Economsit

【内容】

  • 参加者の発表
  • ディスカッション
  • クイズ


【要約】

人間の拡張は、もはやSFではないとThe Economistは論じています。その理由の一つは、人間の運動能力がピークに達したから。オリンピックの陸上記録が近年、停滞していることを指摘しています。だからこそ、人間がもっと進化するためにはゲノム編集といった最先端テクノロジーが必要であると述べています。この考え方は、アメリカの第二次トランプ政権がアメリカ食品医薬品局(FDA)を攻撃していることと関連付けられています。それらを結びつける理由は、FDAもオリンピックも「(人間拡張の)ルールに合わせて設計されていないから」。総じて、The Economistはトランスヒューマニストが新しい世の中の仕組みに向けて新しいルールづくりを着々と進めていることを説明しており、The Enhanced Gamesはその象徴として描かれています。

The Economist argues that transhumanism is no longer science fiction; it is a new game. One reason for that is the idea that human’s physical and mental performance may have peaked. Therefore, quoting George Church, “further gains will require advanced technologies such as gene editing”. This way of thinking connects with America’s Trump administration crashing the Food and Drug Administration because the old systems like FDA and Olympics are “not designed for this rule set”. Overall, the newspaper draws a picture of human enhancers building new rules for a new game with The Enhanced Games as the symbol of that.


考察

「なるほど」と思うThe Economistの記事でした。

どうしてトランスヒューマニズムが大事なのか? なぜそういった発想が生まれるのか? 今回のDecipherにはそんなテーマがありました。

その答えはこの記事ではっきり書かれていませんでしたが、ヒントは見つかりました。

トランスヒューマニズムの考え方は次のように解釈できるでしょう。

・人間の進化は限界に到達した🤔

・この身体が悪い👿

・さらに進化するためには、最先端テクノロジーが必要だ⌚️

・それを使えば、人間は新たな身体をつくることができる👍

では、そのような考え方はどこから生まれるのか?

歴史を遡ると、ユダヤ神秘主義のゴーレムに辿り着きます(参照: Bostrom)。

まさかトランスヒューマニズムの起源がゴーレムだったなんて……。

さて、トランスヒューマニズムをゴーレムの観点から論じた文献があります。

Byron L. Sherwin. Golems Among US: How A Jewish Legend Can Help Us Navigate The Biotech Century. Ivan R. Dee. 2004

著者のバイロン・シャーウィン氏は、ユダヤ神秘主義やユダヤ哲学に関する研究分野の権威でした。

この著書で同氏は、人間を改造することは自然なことであると論じています。

この文献に依拠しながら、ゴーレムについて簡潔にメモしておきます。

ゴーレムとは、神が土をこねて生き物の形にした物。神はそれに魂を吹き込んでいません。

ゆえに、ゴーレムという言葉が示すのは「不完全さ(incompletenss)」。

これこそが、トランスヒューマニズムを理解するためのキーワードのようです。

今回の発見はゴーレムでした。トランスヒューマニズムはユダヤ思想の視点から考えていく必要がありそうです。この研究はまだまだ続きます。

【参考】

Nick Bostrom. A History of Transhumanist Thought. 2005