第24回The Decipherを開催しました。
今回のテーマはウクライナ情勢の行方。ホワイトハウスで起きた米トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の口論に関する記事を複数取り上げて比較しました。

狙い
- 複数の視点から今回の出来事を見てみること
内容
【今回の主な記事】
Lena Surzhko Harned. The only ‘winner’ here is Putin: Ukraine unites in response to Trump-Zelenskyy spat and resigns itself to new reality. March 3, 2025. The Conversation
Michael Froman. Who holds the Trump cards in Ukraine?. March 7, 2025. Council on Foreign Relations
- 各記事の分析
- 要約
- 誰の視点?
- どんな論調?
- 比較分析
- 別の視点
- コンテクスト化した語彙構築(contextual vocabulary)
結果
【各記事の要約】
- Lena Surzhko Harnedの見方: 大統領執務室での口論を受けて、ウクライナ国民は団結したものの、厳しい現実を受け入れざるを得なくなったと言います。「主権を維持し、将来の安全を保障した形で終戦したい」という望みは消えつつあるとのこと。この口論で得をしたのは、他の誰でもなくプーチン大統領だと述べています。
- Michael Fromanの見方: ウクライナは米国という切り札を失いつつあり、ロシアとの戦いでさらに不利な立場に。しかし、まだ誰もこのゲームを掌握していないと言います。米はウクライナに経済的な見返りを求める。ロシアにはいい手札が回ってきたが、米露関係の「グレートリセット」は不確定。欧州は米が抜けた穴を埋めようと動くものの、短期的に見ればその軍事支援は限られている……。このような状況になり、ハッタリはもう終わりだと述べています。
【比較分析】
- Lena氏は、今回の出来事に対するウクライナの専門家などの反応を取り上げて、同国のムードが暗いことを説明。対して、Froman氏はカードゲームという比喩を用いながら、より多くのプレイヤーの観点からウクライナ情勢の新たな局面について述べています。両氏とも今回の口論はロシアに有利に働いたとみている模様。
- Lena氏は今回の出来事の不可解な点を指摘。なぜ通訳を介さずに話し合いが行われたのか?
【別の視点】
今回の出来事は仕組まれていた? 二つの考え方があります。
1: Ambush theory
The Economistは「米国側はウクライナ側を待ち伏せしていた」という見方(ambush theory)にはそれなりに根拠があると述べています(3月1日付)。また、「トランプ大統領は口論が終わった後、『これはテレビで大きなニュースになる』と皮肉を言った」とも報じています(2月28日付)。
2: Wag the dog misdirection
今回の口論は、トランプ大統領が自身の名前も飛行記録に載っているとされる「エプスタイン文書」の公開から世間の注目をそらす効果を狙ったものであるという見方も。この手法は英語で「wag the dog misdirection」と呼ばれています(「今回の語彙」を参照)。
【大胆な想像】
仮題: ホワイトハウスのミステリー
トランプとゼレンスキーがオーバルオフィスで激しい口論を繰り広げ、お互いを裏切り者だと非難し合う。ゼレンスキーはトランプがマフィアと裏取引しているという噂を突きつけるが、トランプは「フェイクニュースだ!」と激怒。そこへプーチンとネタニヤフが電話で参戦し、二人で大笑い。ゼレンスキーはそこで気づく——このケンカ自体が目くらましだったのだ。だが、本当の勝者はトランプでもプーチンでもなく、ネタニヤフだった。混乱の裏で、イスラエルは静かに外交的・経済的な利益を手に入れていたのだ。トランプは満足げに椅子にもたれかかり、「これで見出しはあのケンカで持ち切りだ」とほくそ笑むが、実はネタニヤフこそが全員を手玉に取っていたのだった。「政治家になる前はコメディアンだったけど、結局まだコメディアンだな」とゼレンスキーは言った。
[Synthesis imagination]
Working title: The White House Mystery
Trump and Zelensky clash in a heated shouting match in the Oval Office, accusing each other of betrayal and manipulation, with Zelensky calling out Trump’s rumored secret deals with a mafia. The argument spirals until Putin and Netanyahu join in by phone, laughing at the chaos. Zelensky realizes too late that the fight was a setup. But the real winner isn’t Trump or Putin — it’s Netanyahu. As the others fight, Israel maneuvers quietly, securing diplomatic and economic gains while the world is distracted. Trump, ever the showman, leans back, satisfied that the headlines will focus on the drama, not the truth — unaware Netanyahu is the one who played them all. “I was a comedian before politics, but it turns out I still am,” says Zelensky.
【今回の語彙】wag the dog misdirection
定義: 重要なことから世間の注目を逸らすための政治的手法(to divert somebody’s attention from an important issue to something unimportant.)
例文: Trump’s wag the dog misdirection brilliantly worked. “The art of the deal? Nah. This is the art of the distraction,” quipped the president.